クランプス(Krampus)-アルプス地方に伝わる聖なる使い-

12月 11, 2017 uimmade 0 Comments


12月といえばクリスマス、クリスマスといえばサンタクロース、サンタクロースといえば聖ニコラウス。
そんな、聖ニコラウスには「クランプス(Krampus)」と言う使いがいることをご存知でしょうか。

クランプスは、日本でいう秋田の「なまはげ」のような存在です。サンタクロースが良い子にプレゼントを贈るのに対し、悪い子を懲らしめる悪魔のような存在で描かれています。
長い舌と悪魔のようなツノ、熊のような体格、鞭打つための樺の枝を手にし、悪い子を地獄へ連れて行くために放り込むカゴを背負っています。

そんな、クランプスのルーツに関する動画を紹介します。
クランプスは、11~13世紀に南方ドイツやオーストリアで発祥しました。その後、スイスやチェコ、ハンガリーなどのアルプス山脈付近の国々に伝承していきました。

クランプスには地域によって様々な呼び名があり、例えばオーストリア西部では「トロル」などと呼ばれていたようです。
クランプスが大々的にクリスマスに結びつけられ、広く知れ渡ったのは19世紀初頭でした。かの有名な「グリム兄弟」がクランプスの民話を紹介したのが大きいようです。

伝統的にサンタクロースの聖祭は12月6日とされ、クランプスの祭はその前日の12月5日でした。その二日間、子供達は枕元に脱いだ自分のブーツを置き、サンタクロースがその中にプレゼント(果物やナッツなどのおやつ)を入れてくれるのを心待ちにしていました。
「クランプスナイト」と呼ばれる祭の夜、クランプスは大声で喚きながら子供達を怖がらせます。

19世紀末〜20世紀の初頭にかけてヨーロッパのクリスマスカードにクランプスが度々登場し始めます。
これは、子供達に「一年良い子にして居ればサンタさんからプレゼントがもらえるけど、悪い子にしていると恐ろしいクランプスが来るからね」と言う戒めを込めたカードのようです。

様々なカードが作られていたようで、子供達への「クランプス効果」は大いにあったことが伺えます。

しかし、そんな大衆に親しまれたクランプスも1930年代に入り社会主義やファシズムなどの社会思想が台頭して来ると徐々に陽の目を見ることが少なくなって来ました。
ドイツやオーストリアなどのクランプスの母国に政治の色が強くなると、クリスマスの楽しみなどは遠ざけられるようになったのです。
当時のニューヨークタイムズは、"Krampus Disliked in Fascist Austria"(クランプスはオーストリアファシズムに疎まれる)という見出しで報じています。

クランプスが復活するのは第二次大戦後の1950年代のことでした。
現在、クランプスは国境を超えて活躍し、ロサンゼルスやニューヨークでもクランプスフェスティバルが開催されているのを見ることができます。

【おまけ】19世紀から20世紀初頭にかけてのポストカード集

それにしても、これだけ様々なポストカードが作られているのは面白いですね。
実を言うと、私はこのような古いポストカードを調べていて偶然にクランプスの存在を知ったので、たくさん紹介しました。
古いポストカードに描かれているクランプスは独特の不気味さがあって良いです。


私のピンタレストにはクランプスのポストカードがアーカイヴしてありますので、こちらも参考までに。