スフィンクス

10月 15, 2017 uimmade 0 Comments

スフィンクスとは


スフィンクスとは、エジプトやギリシャに伝わる聖獣のことである。
エジプトのものとギリシャのものではそれぞれ容貌や神話が異なっている為順を追って説明していく。



エジプトのスフィンクス

Photo byBarcex-"Great Sphinx of Giza, Egypt(2008)"/CC BY 4.0

スフィンクスの起源は、紀元前3000年前以上の古代エジプトだとされる。

「スフィンクス」と言われて多くの人が思い浮かべるのは、上記写真のような「ギザの大スフィンクス」の姿ではないだろうか。
エジプトにおいて、スフィンクスは人間の頭(男性)とライオンの胴体を持った聖獣とされる。
第四王朝の王カフラーの墓である第二ピラミッドの遺構とギザの大スフィンクスは一体として作られていることから、この頭部は、カフラーに似せられて作られたという説がある。

ライオンは古代エジプトでは王権のシンボル、神聖な獣として見なされていた為、生ける神とされる王(ファラオ)の神聖と重ね合わせられて作られたと考えられる。

「シェスプ・アンク(生ける彫像)」や「ホル・エン・アケト(地上のホルス)」などと呼ばれていたようだ。

エジプトから発祥したスフィンクスは、メソポタミア(現在のイラク)に広がり、ミケーネ(現在のギリシャのペロポネソス半島)に伝わり古代ギリシャ世界やエーゲ海へと伝わっていった。

ギリシャのスフィンクス


オイディプスとスフィンクス

ギリシャ神話に登場するスフィンクスは、美しい人間の女性の顔と二つの乳房を持ち、ライオンの胴体に翼のある姿として描かれる。
スフィンクスの名前の由来はギリシャ語の「Sphink(きつく縛る、絞め殺す)」に由来している。
見つめられると身動きできなくなることから、「きつく縛る者」と呼ばれた。
スフィンクスが登場する神話については、「オイディプスとスフィンクス」が有名である。

オイディプスとスフィンクス

ギュスターヴ・モロー,"オイディプスとスフィンクス(1864年)"

 ある日、オイディプスという青年がテーバイ(テーベ)の都にやってきました。都はある二つの事件で大騒ぎでした。
一つは王が盗賊に殺されたということで、もう一つは、市の郊外にそびえる丘にスフィンクスという怪物が現れて、通り行く人に謎をかけ、できなかった者をとって食べてしまっていたのです。
その謎とは(あの有名な)「朝は四本足、昼は二本足、晩は三本足で歩く者は何か?」というものでした。
そこで「もしこの謎を解いたものは死んだ王の代わりにこの国の王となれる」という御触れがだされました。
オイディプスはさっそくスフィンクスのいる丘まで出向き、この謎の答えが人間であると解きました。
渡部伸明と怪兵隊,『幻想世界の住人たち』,新紀元社,2011年
このあまりにも有名な話にもスフィンクスは登場する。
しかも、主人公に謎かけをするという重要な役回りで。
謎を解かれたスフィンクスは崖から海に身を投げて死んだという。
スフィンクスがテーバイに現れた理由は、同性愛という悪徳(当時の)に耽っていたラーイオス王を罰するために、女神ヘラによって送られたとされている。

スフィンクスをめぐる話


話は飛ぶが、フロイトによって「エディプスコンプレックス」と提唱された概念がある。
要約すれば、男児が幼年期に母親を自分だけの存在として手に入れようと父親に対して抵抗感を抱く精神的葛藤のことである。
オイディプスの物語には、(自らはそうとは知らなかったが)父親を殺し母親と交わるという描写が出てくる。
これにちなんでエディプスコンプレックスと名付けられた。
エディプスコンプレックスの中では、スフィンクスは母親の中の恐ろしい面を代表しているとされる。

この概念が提唱されたことによって、西欧社会の中でスフィンクスは完全に女性化された。
特に、神話や伝承など幻想的なものへの関心が高まった19世紀末の西欧では、スフィンクスが度々芸術や文学のモチーフとして人気を博した。
ドミニク・アングル,『オイディプスとスフィンクス(1808)』
フェルナン・クノップフ,『スフィンクスの愛撫(1896)』

参考書籍

渡部伸明と怪兵隊 『幻想世界の住人たち』新紀元社 2011年

澁澤龍彦 『幻想博物誌』河出文庫 1983年